「大和言葉」・・・江戸時代の隠れたロングセラー

先日、さるお方から結構ないただきものをした。

「大和言葉」と題された書物である。大和言葉といえば一般的にはこの国の語彙から、海を渡ってやってきた漢語や外来語を除いたわが国固有の言葉を言うのだと思うが、このあたりの意味での出版物はここ数年とみに目立ってきて、我が家にも一冊、

なんてのがある。この手の書物には「日本すごい・・・」と声を大にして他国を見下げるような考えの人々が好むような記述ちらほらと見られることが少なくはない。まあ、ちらちらと立ち読みをする限りのことであって確かなことだとは自分でも思っていないが、私の少ない経験の中ではそんなにおいを感じて、せっかく手にとってもそのまま書棚に返してしまうことが多かった。そんな中で購入したのが上の御本であった。さすがに我が尊敬する上野先生のこと、この書物に関してはそのようなにおいは一切感じることはなかったからである。

けれども、今度送っていただいたこの御本の大和言葉とは、そのような大和言葉とはちょいと意味が違っていた。「大和言葉」というタイトルの横に書いてあった副題に曰く、

ーあなどれない江戸時代の女性の教養書ー

教養書・・・?・・・はて、そういうからにはここでいう「大和言葉」というのは何かしらの書物なのか・・・それは、いかなる書物なのか・・・早速ググってみた。

1 日本固有の言葉。漢語・外来語に対していう。和語。やまとことのは。
2 和歌。やまとうた。やまとことのは。
「その―だに、つきなくならひにければ」〈源・東屋〉
3 平安時代の、上品な言葉。雅言(がげん)。
「それこそもう―でお人柄におなり遊ばすだ」〈滑・浮世風呂・三〉

デジタル大辞泉

この御本で言う大和言葉とは「3」の意味においてであるようだ。すなわち「中世以後、宮中、将軍家などの奥向きに奉公する女性が仲間うちで用いた特殊なことば。」である女中言葉のことをさしている。

そして女性のための教養書として江戸期にはそれらの言葉を集めた集成がたびたび出版されていた。この女中言葉はしばしば大和言葉とも呼ばれ、「大和言葉」と題された女中言葉集も江戸期を通じて出版され続けていたらしい(「女中ことば集の名称」松井利 彦・・・文林2005)。

このたびいただいた御本はその著者である児玉敏昭氏が、それらのなかのひとつの「大和言葉」の、一つ一つの項目(全156項目)について注釈を加えたものである。

氏は言う。

筆者は『大和言葉』を、江戸時代の隠れたロングセラー本ではなかったかと思っている。江戸時代に「大和言葉」を名に持つ類書が長期間にわたり出版され、すでに五〇種類以上も見つかっていることが、何よりもそのことを雄弁に物語る。

と・・・

恥ずかしながら、私はこの「大和言葉」なる女中言葉集の存在を知らないでいた。それどころか、女中言葉集といった類の書物があることすら知らなかった。恥じ入るばかりであるとともに、この児玉氏から「大和言葉」を贈っていただいたことで、その蒙を啓いていただいたことに大いに感謝している次第である。

児玉氏はもともと法律関係の学校を出た方であるが、お仕事のかたわらこの国の古代に興味を持たれ、通信教育で奈良大学の文化財歴史学科を卒業された。御著書に

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がある。これらの3書はまだ読んだことがない故、あれこれ云々することはできないが今手元にあるこの「大和言葉」だけは、少なくともこれまで私の知らなかったことについて新たな興味を抱かせてくれた。これから読み始める段階なので、私なりの見解と氏の見解とが相いれないという事態も充分にありうることである。しかしながら、私の蒙を啓いていただいた・・・というだけですでにこの書は私にとって意味のあるものとなっている。少しずつ・・・ゆっくりと読んでゆこうと思う。

さて・・・ここまで読んでいただいて、みなさんは私がなぜこんな御本を贈っていただけるような僥倖を得たのかとお思いであろう。その辺りを如何にちょいとお話ししてみたいと思う。

それは・・・去年だったか、今年の速い時期(覚えていないのが情けない)のことである。児玉さんのほうから、このブログの「お問い合わせ」の方から突然お便りをいただいた。当ブログの記事中にある三輪山の写真を執筆中のその御著に使いたいというお話であった。

私のようなものの撮った拙い写真をその御著に使っていただける・・・はじめはちょいと躊躇したが、こんな機会なんてめったにあるもんじゃないと思い、その使用をお願いした。

自分の撮った写真がこのような機会に巡り合うことなんてめったにないこと・・・製本されたならばきっとその姿を見てみたいと思うのが人の情というものであろう。私はその時、その御著が上梓された暁には購入させていただきたいのでぜひともお教えいただきたいと申し添えていた。それがこのたびこのような形で贈っていただいたのである。

早速御礼のメールでもと思ったのだが、あろうことかその時やり取りしたメールが残っていない。アドレスもどうしたものか残っていないのである・・・と思いきや、それらのすべては今入院中のコンピュータの方に保管されていることを思い出した。

「しまった」である・・・このたびの入院での治療で、わがコンピュータは初期化なる治療を受けるやも知れない。仕事上やら何やらのデータはクラウド上に保管してあるのだが、私的な部分はどうせ大したデータもないのだからとコンピュータにのみ保管し、バックアップを取っていなかったのである。

となれば・・・「大和言葉」を贈っていただいた際に記してあった氏の住所に書状をお送りするしかない。悪筆極まりない私故、それがかえって失礼にならないか心配なんであるが・・・きっと・・・

最後に・・・私の写真が載せてあるページを少しだけ・・・

三輪の山とは  尋ねて合といふ事(「大和言葉」の原文)

別本は「たづねてとへ」とし、「こひしくは たづねてもこよ わがやとに みわの山もと すぎたてるかと」とあった。ことば遊び辞典には・・・以下略(児玉氏の注)

追伸
この記事を児玉さんがもし読んでおられら
・・・すぐにでもお礼を申し上げたかったのですが上述のような理由でメールを差し上げることができませんでした。お詫び申し上げます。これからじっくりと楽しませていただきたいと思います。なお、御著を勝手に紹介し、一部を引用いたしましたこと併せてお許しいただきたいと思います。

「大和言葉」・・・江戸時代の隠れたロングセラー」への4件のフィードバック

  1. 玉村の源さん

     大変に興味深く拝読しました。
     以前、私のブログに寛政11年の『増補 大和詞』を取り上げたことがありました。
    http://mahoroba3.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-b6d8.html
     これと同類でしょうか? この本も「増補」という角書きが付いていますので、やはりよく売れた本なのでしょうね。
     この本を翻字してみたいなどと思いつつ、そのままになってしまっていますけど、ご紹介のご本と基本的に同じ内容ならば、翻字しなくても済みます。あるいは翻字する時の貴重な参考書になります。
     私も買いたくなりました。

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    返信
    1. 三友亭主人 投稿作成者

      源さんへ

      >これと同類でしょうか?

      どうも違うようですね。源さんのお手元のものは「いろは」順になっているかと思いますが、今回いただいたものは…ちょっと?ですね。
      「あきづしま」から始まっています。最後は「軒の玉水」で、そのひとつ前は「わたつうみ」ですから、「アイウエオ」順でもないようです。
      それに、筆者の「はじめに」によれば、筆者の手元にあるものは7行本で、この類の書物では珍しいものだそうです。ですから「基本的に同じ内容ならば、翻字しなくても済み・・・」とはいかないようです(笑)。
      でも、すべてにわたって影印も付されていますので、私の崩し字学習のともになるかもしれません。ちなみに書店に出回るのは今月すえぐらいからになるらしいですが、「一部の書店」でということらしいです。まあ、以前の著作がネットで販売されているので、この御本もと思うのですが・・・

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  2. 玉村の源さん

     ありがとうございます。
     ということは、書名は同じでも、同類の本がたくさん刊行されていたということなのでしょうね。人気のほどが偲ばれます。
     昨夜、アマゾンを覗いてみたのですが、まだ載っていませんでした。今月末まで待つことに致します。
     私もくずし字学習の参考書にします。

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    1. 三友亭主人 投稿作成者

      源さんへ

      結構人気があったのでしょうね。
      一寸ググっただけでも幾種類の「大和言葉」が・・・

      私なんかほとんど崩し字が読めないので、いい参考書になります。

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      返信

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